まず、津本氏は「幼いころから宗教に触れ、宗教が身近に感じられる雰囲気の中で育った。また、物心がついた時から本に触れ、何よりも熱中して読書をしていた」と自らの幼少期を振り返った。 次に、津本氏が戦時中に働いていた工場での体験について、「爆弾が目の前で落とされ、すぐ近くにいた多くの人が亡くなってしまった。この恐怖からなかなか抜け出すことができなかった」と戦争の恐ろしさを話した。 津本氏は、34歳までサラリーマン生活を続けていたが、戦争の恐怖心に支配され、無気力になりがちであったという。しかし、36歳の時に転機を迎え、幼少期に好きだった読書を続けていきたいと考え始める。これによって、それまで抱いていた恐怖心から抜け出し作家を志す。 最近では、身近な人の死によって世の中の無常を感じ、自分もいつか死んでしまうのも自然なことと受け止めているという。「この年になると、世の中の移り変わりがよく見えてくる。あとどれだけ生きていけるのか分からないが、この世から立ち去るのはあまり怖くない」と述べた。 作家生活を通して、「言葉が無かったら、人間の世界は崩れる。いまだに人間の技術で命はつくれないということが神の意志であること。作家になったのも自分の定めだったと受け止めている」と語った。 最後に、「現実を直視して、これから先について考えることが大切である」と来場者たちにメッセージを送り、講演会は終了した。 【関連記事】 ※津本 陽 昭和4年3月23日、和歌山市生まれ。昭和53年「深重の海」で第79回直木賞受賞。以降、数多くの賞を受賞する。主な著作に『明治撃剣会』などがある。
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