大学生の時で、強く記憶に残っているのは、勉強のことではなく、出会った人々や過ごした町のことです。 今では剣豪小説や歴史小説の作家ということになっている私ですが、始めは現代を舞台にした小説を書いていました。ある作品で殺陣(たて)の場面を書いた時、それが作家の川口松太郎さんの目に触れたそうです。すると、川口さんは私に剣豪小説を執筆することを勧めてくださいました。そして完成したのが『明治撃剣会』です。この作品を書いてから、剣豪小説の依頼が殺到しましたね。 こうして、剣豪小説を書いていると、私自身の成長もあってか、人間像というものに興味を持つようになりました。そこに偶然、歴史小説の依頼が舞い込んできたのです。歴史小説において大切なものは、やはり主人公の造形。自分の内部にそれを受け入れる器がないと、主人公不在の小説になってしまうのですね。 私は、どんな仕事でもやろうと全力投球で今までやってきました。しかし70歳になってからは、ようやく自然なペースで執筆するようになりました。 今回の講演会では、私が今まで歩んできた人生の無常さと、幼いころから触れてきた親鸞聖人の言葉について話そうと思い「無常について」という演題にしました。 以前『弥陀の橋は』という作品で親鸞聖人の生涯を描きました。親鸞聖人には弱い人間を切り捨てない優しさがあると思います。私は子どものころから、その優しさを身近に感じてきました。親鸞聖人の言葉は常に、至らない私を支えてくれます。 龍谷大学は浄土真宗の大学ということもあるので、学生には、世の中を盛り上げると同時に、親鸞聖人の教えを体現していってもらいたいと思います。
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