主人公の杉安佐子は、19世紀文学の研究者。彼女はあるシンポジウムの場で『源氏物語』には失われた「輝く日の宮」の巻があったと主張する。畑違いの研究者のこの意見を良しとしないのは『源氏物語』の専門家だ。シンポジウムでは異例の大論争が始まり、ついに安佐子は論敵の要求により「輝く日の宮」を小説の形式で執筆することになる。 「輝く日の宮」についての考察を続ける安佐子の様子は、推理小説の主人公のようでもあり、読者は次々と立てられる斬新な仮説に驚きを覚えるだろう。『源氏物語』をほとんど知らない読者をも引き込む魅力が本作にはある。 物語の終盤、千年の時を超えて、紫式部と一体となった安佐子が書き上げる「輝く日の宮」はまさに圧巻だ。 本作品は、芥川賞受賞作家の丸谷才一が約10年に一度発表している長編小説の一つ。作者の日本文学への深い造詣がこの作品でも、惜しむことなく披露されている。 今年は、『源氏物語』の成立より千年を迎える記念すべき年である。これを機に日本文学史上最高の傑作と称される『源氏物語』の世界に触れてみてはどうだろうか。
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